


新海誠監督の作品には、『君の名は』を超える名作があることをご存じでしょうか?
君の名は越え!?新海誠映画作品おすすめ8選|話題の最新作も!
作品紹介① ショートフィルム『彼女と彼女の猫』(2000年)
【あらすじ】春先の雨の日、猫のチョビは彼女に拾われた。母のように優しく恋人のように美しい彼女に心奪われるチョビは、彼に想いを寄せる仔猫のミミを相手にしようとしない。だがある秋の日、長い長い電話の後、チョビは彼女が泣いているのを目撃してしまう。やがて冬が来て、いつもと変わらない日々が戻ってきた。チョビは思う、彼女もボクもこの世界が好きなんだと。

作品紹介② 彼女と彼女の猫 -Everything Flows- (2016年)【監督:坂本一也/原作:新海誠】
【あらすじ】2013年にはこの短編アニメーションを元にした、小説版「彼女と彼女の猫」が出版された。気鋭の脚本家・永川成基が執筆を手掛けた小説版では、原作とは異なる視点の連作短編集として、拾われた猫たちを軸にそれをとりまく人々の四季折々の物語を描き出し、作品の世界観に豊かな広がりを与えた。
原作の発表から16年を経た今、形を変えながら息づいてきた「彼女と彼女の猫」が、テレビアニメーション「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」としてよみがえる。
作品紹介③ 『ほしのこえ』(2002年)

【あらすじ】国境の彼方にそびえる塔と、彼女への憧れ。二つの思いを胸に少年は飛行機を作り始めた。そして…世界と彼女との間で引き裂かれる、青き日々の想い。ひとつの決意を胸に、彼は飛行機を空に疾させる———
作品紹介⑤ 『秒速5センチメートル』(2007年)
【あらすじ】小学校の卒業と同時に離ればなれになった遠野貴樹と篠原明里。二人だけの間に存在していた特別な想いをよそに、時だけが過ぎていった。そんなある日、大雪の降るなか、ついに貴樹は明里に会いに行く……。

作品紹介⑥ 『星を追う子ども』(2011年)
【あらすじ】ある日、父の形見の鉱石ラジオから聴こえてきた不思議な唄。その唄を忘れられない少女アスナは、地下世界アガルタから来たという少年シュンに出会う。2人は心を通わせるも、少年は突然姿を消してしまう。「もう一度あの人に会いたい」そう願うアスナの前にシュンと瓜二つの少年シンと、妻との再会を切望しアガルタを探す教師モリサキが現れる。そこに開かれるアガルタへの扉。3人はそれぞれの想いを胸に、伝説の地へ旅に出る―。
作品紹介⑦ 『言の葉の庭』(2013年)
【あらすじ】靴職人を目指す高校生・タカオは、雨の朝は決まって学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。ある日、タカオは、ひとり缶ビールを飲む謎めいた年上の女性・ユキノと出会う。ふたりは約束もないまま雨の日だけの逢瀬を重ねるようになり、次第に心を通わせていく。居場所を見失ってしまったというユキノに、彼女がもっと歩きたくなるような靴を作りたいと願うタカオ。六月の空のように物憂げに揺れ動く、互いの思いをよそに梅雨は明けようとしていた。
- 「雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」
意味:雷が鳴って雨が降ってくれれば、あなたを私のそばに留めておくことができるのに - 「雷神(なるかみ)の 少し響(とよ)みて 降らずとも 我は留らぬ 妹し留めば」
意味:たとえ、雷が鳴り響いたり雨がふらずとも、あなたが引き留めるなら私はここにいる。

作品紹介⑧ 『君の名は。』(2016年)
【あらすじ】1000年ぶりの彗星の来訪を1カ月後に控えた日本。山深い田舎町に暮らす女子高校生・三葉は、ある日自分が男の子になる夢を見る。一方、東京で暮らす男子高校生の瀧も奇妙な夢を見た。繰り返される不思議な夢。そして明らかに抜け落ちている、記憶と時間。二人は気付く。「私/俺たち、入れ替わってる!?」出会うことのない二人の出逢い。運命の歯車が、いま動き出す。

作品を観直す人は、「下の『君の名は。』の作品モチーフに関する深い話」を知ってから観ると作品理解が深まるだろう。
2011年以降、僕たち日本人は「もしも自分があなただったら…」と常に考えるようになったと思うんです。言い換えれば、今の自分とは違う自分があったかもしれないという感覚です。「もしも自分があのとき、あの場所にいたら」とか、「もしも明日、東京に大きな災害が起きたら…」とか。それは、思いやりが深くなったというよりは、常にそうなる可能性があるということを突きつけられて、意識下に染みついてしまったという印象です。
- クロスロード
「まだ会ったことのない君を、探している」というキャッチコピーに表される、まだ出会う前の少年と少女を題材とした物語は、後述の『クロスロード』を元としている。
- 万葉集
前作『言の葉の庭』のヒロイン『雪野百香里』が登場し、作品の伏線となる万葉集の和歌を説明する。
『誰そ彼と我を名問いそ長月の露に濡れつつ君待つ我そ (作者不詳)』・・・誰だあれはと、私のことを問わないでください。九月の雨に濡れつつ、あなたを待っている私です。
「誰そ彼」とは、三葉にとって、入れ替わっている男は誰なのか?、そして、物語中盤で瀧が三葉に「お前、誰?」と言うシーンの伏線になっており、『君の名は。』というタイトルそのものの元となっている言葉でもある。
- 古今和歌集
小野小町の和歌『思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを』(訳:あの人のことを思いながら眠りについたから夢に出てきたのであろうか。夢と知っていたなら目を覚まさなかったものを)からの発想。
- とりかへばや物語
平安時代後期の『とりかへばや物語』は、関白左大臣の2人の子供、内気で女性的な性格の男児と、快活で男性的な性格の女児が性別を取り換えて育てられる物語。
『新海誠』とは
日本のアニメーション監督。自身の作品の小説を執筆しており、小説家でもある。
1999年にゲーム会社である、日本ファルコム在籍中にショートフィルム『彼女と彼女の猫』を制作し、翌年発表。日本ファルコムでは、『英雄伝説 ガガーブトリロジー』や『Ys II ETERNAL』のOPムービーを手掛けている。
『Ys II ETERNAL』(2000年発売)には、美しい空の風景と、「浮遊大陸イース」と「地上」という距離が存在しており、そこに「新海ワールド」を見て取ることができる。
2002年に、個人で制作した短編作品『ほしのこえ』でデビューし、その後は『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』『言の葉の庭』を発表し、2016年8月に全国公開された『君の名は』は、国内動員数1900万人を突破し、日本における興行収入は、『千と千尋の神隠し』に次ぐ2位、全世界興行収入では、日本映画としては最高の337憶円以上を稼ぎ出し、日本を代表するアニメ―ション映画監督となった。
作風は、SF的世界観を用いつつ、美しい風景や音楽、繊細な言葉によって思春期の少年少女の感情の揺れ動きを表現するものとなっており、その作品群は「新海ワールド」と呼ばれている。
新海ワールドの魅力について
新海ワールドは『距離』をテーマとし、『風景』『音』『言葉』の3つの要素で構成されている。
- 「距離」について
新海誠作品では、「距離」が作品のテーマになっている。少年少女が、届くか届かないか分からない距離に手を伸ばす物語、そこに新海誠はロマンチシズムを見出しているのだろう。2014年春にZ会の受験生応援CMとして放映された新海誠が監督した短編アニメーション『クロスロード』をみると分かりやすい。
塾もない離島から大学進学をめざす女子高生の海帆(みほ)とアルバイトをしながら受験勉強にはげむ都内在住の男子高生、翔太。2人は遠くにあるはずのどこかに向かって「Z会の通信教育」を受ける、知らない間に人生が交差していく2人の物語。
離島と東京の距離、目標が確かに見えている訳ではないが、遠くを目指して努力する2人。海帆と翔太は、それぞれが遠くを目指して進むうち2人の距離は縮まり交差し、大学の合格発表で出会う。
他の作品でテーマになっている「距離」は、以下のようになっている。物理的な距離、心の距離、年齢差、生きている時間が違うことによる距離など、さまざまな距離が描かれ、その距離に届かせるために懸命になる姿が描かれているので、「距離」に注目して作品を観ると、より作品を深く理解できることだろう。
- 風景
風景描写の精緻さは、新海ワールドにおいて、観客の感情を揺さぶる役割を果たしている。一枚の絵として切り取って飾りたくなるほどの感動を呼び、神秘性を感じさせる。
ただ写実的であるというだけではなく、実在する風景について圧倒的に精緻に描きこむことにより、現実より美しい空想的な風景に仕上げている。こういった風景描写により、ファンタジーなリアル、もしくはリアルなファンタジーとして現実と空想の境目が曖昧になる。これにより作品世界に生きるキャラクターに自己を投影しやすくなり、観客の心をダイレクトに揺さぶるのではないだろうか。
- 音
新海誠作品においては、「音楽」と「生活音」という音がそのシーンのト書きの役割を果たしている。新海誠作品では、言葉で全てを伝えることはしない。情景は、音により伝えられ、観客は自然と行間を読む。
- 言葉
繊細な言葉も、新海ワールドの特徴だろう。例えば、「秒速5センチメートル」の「第一話 桜花抄」のラストの貴樹の独白「明里のそのぬくもりを、その魂をどのように扱えばいいのか、どこに持っていけばいいのか、それが僕にはわからなかったからだ。僕たちはこの先もずっと一緒にいることはできないとはっきりと分かった。」などに繊細さを感じる。
「秒速5センチメートル」では、主人公貴樹の想い人である明里が東京から栃木に転校し、次に貴樹が東京から鹿児島に転校することになるのだが、中学1年生の貴樹は鹿児島に行くと明里ともう会えなくなると考えて、東京から栃木まで明里に会いに行く。その途中では様々なトラブルが起き、深夜になってやっと待ち合わせ場所について明里に会うことができた。そして冬の桜の木の下で明里とキスをする。その時に貴樹のこの独白が流れる。
自分の無力さを痛感して、もう明里に手を届かせることはできないと悟ったということが、婉曲的だがとてもよく伝わってくる。
新海誠監督おすすめ作品まとめ
数々の受賞歴をもち、2012年には、内閣官房国家戦略室より「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」として感謝状を授与された、日本を代表するアニメーション監督である新海誠監督。
美しい映像と、文学の知識に裏打ちされた深みのある表現は、最高峰の芸術ということもでき、同時にエンターテイメント作品でもあるといえます。
当ページの内容は新海ワールドをより楽しむための参考になるでしょう。
・本ページの情報は2020年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。
・紹介している作品は、2020年3月時点の情報です。現在は配信終了している場合もありますので、詳細はFODプレミアム公式ホームページにてご確認ください。
・本作品の配信情報は2020年3月時点のものです。配信が終了している、または見放題が終了している可能性がございますので、現在の配信状況については「dTVチャンネル」のホームページもしくはアプリをご確認ください。